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脳研究報告・科学論文

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科学論文掲載情報

最新スポーツ脳科学が明らかにした運動脳の究極のしくみ

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  • Citation: Kato T (2022) Vector-based analysis of cortical activity associated with dumbbell exercise using functional near-infrared spectroscopy. Front. Sports Act. Living 4:838189. doi: 10.3389/fspor.2022.838189 原著

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開通前の高速道路運転中の脳活動の
可視化に成功

脳の学校は、中日本高速道路株式会社との共同研究で、世界で初めて実際の高速道路(開通前)を走行している時の脳活動の可視化に成功しました。そして、最新のベクトル脳機能fNIRS計測法を適応し、「スピードが変化する加速や減速時の方が前頭眼野で酸素消費が起きる」ことを発見しました。

これまでの脳研究は、計測装置や実験設備などの制約により、室内で行われた報告がほとんどでした。しかし、現在は小型の脳計測装置もあり、電源が確保できれば、実際の現場で計測を行う、フィールドワーク様の脳研究可能になっています。
そこで、私たちは、脳計測装置を車載し、自動車運転中の脳活動を計測して画像化しました。

今回の研究で特に興味深いことは、目の動きを制御する前頭眼野において、自動車の加速と減速時には活動が有意に増加しましたが、速度変化のない一定走行、Uターン時には、加速、減速時よりも活動が弱くなったことです。

自動車運転は、主に眼を通じて道路や周囲の状況を把握し、判断し、ハンドルやアクセルを操作する活動です。一定走行時には、視覚情報を取り入れるための前頭眼野は、あまり活動しなくなりますので、覚醒が下がり「ぼ~」っとしやすい可能性が考えられます。覚醒が下がると、前方車両の速度低下に気づくのが遅れることなどが予測されます。

一定走行で安定して走っている時こそ、意識的な注意が必要であることを頭の片隅において運転することが大切だと考えられます。我々は、今後も自動車運転に関しての知見を積み重ね、安全な交通設備等に還元していくことを考えております。

この研究成果は、Web公開されております。

●原著論文はこちらに掲載されております(ページ横のPDFより全文ダウンロード可能です)
Functional brain imaging using near-infrared spectroscopy during actual driving on
an expressway. Front. Hum. Neurosci. Doi: 10.3389/fnhum.2013.00882.

口呼吸は、鼻呼吸よりも、前頭葉で多くの酸素消費を生じさせる

ベクトル法fNIRS法を用いて「口呼吸は、鼻呼吸よりも前頭葉で多くの酸素消費を生じさせる」ことを確認しました。

普段の鼻呼吸に比べて、口呼吸はADHDや睡眠障害など様々な合併症を引き起こすことが報告されています。今回の研究により、口呼吸では前頭葉の活動が休まらず、慢性的な疲労状態に陥りやすくなることに起因する可能性が明らかになりました。前頭葉の慢性的な疲労状態により、注意力が低下し、学習能力や仕事の効率の低下を引き起こしてしまうことが考えられます。
寝ても疲れが取れなかったり、昼間に眠たく感じたり、注意散漫になる人は、口呼吸習慣に気をつける必要があります。

この研究成果は、英国科学誌「Neuroreport」で出版されております。

●原著論文はこちらに掲載されております
"Increased oxygen load in the prefrontal cortex from mouth breathing:
a vector-based near-infrared spectroscopy study"

Neuroreport:24 (17): 935-940, 2013.

脳の酸素消費を見れば、本人の申告なしで言葉を理解しているか分かる

ベクトルfNIRS法を用いて、脳の酸素消費を計測することで、ヒトが言葉を聞いた際に、(本人が理解したかどうかを意思表示しなくても)本人が理解しているかどうかを判定できることを確認しました。

この成果は、これまで検出が難しいと考えられてきた「Initial dip(イニシャル・ディップ)」と呼ばれる生体反応の存在を明確にするものであり、脳機能イメージング研究の進展に大きく寄与することが期待されます。

研究論文は、2012年9月に英国科学誌「NeuroReport」のオンライン速報版で公開されており、2012年11月14日付の同誌面上で出版されます。

日本語の解説文

「人が言葉を理解したかどうかを、何も言わずに判定する脳科学技術」が実現

『ベクトル法 fNIRS』を用いて、脳の酸素消費を計測することで、ヒトが言葉を聞いた際に、(本人が理解したかどうかを意思表示しなくても)本人が理解しているかどうかを1.5秒で判定できることを確認しました。

この成果は、これまで検出が難しいと考えられてきた Initial dip(イニシャル・ディップ) と呼ばれる大脳生理反応の実在を明確にするものであり、脳機能イメージング研究の進展に大きく寄与することが期待されます。

研究の背景と概要

脳の働きを非侵襲に計測する方法として近赤外分光法(fNIRS)があります。この脳機能 fNIRS計測法は、脳の学校代表を務める加藤俊徳医師が 1991 年に原理を発見し、1993年に論文発表した技術です。同手法は、脳血流などの血液動態のダイナミックな変化を観察する手法として注目されてきました。しかしながら、実際の神経活動と比べて、血液量の変化は非常にゆっくりとしていることや広範囲で生じることが問題視されてきました。これが、脳がいつ、どこで活動したのかを、血流をみるだけでは正確に判断することが難しい理由でした。

そこで加藤医師は1993年以降、自らこの問題解決に乗りだし、2001年米国において、血流動態の位相に着目することで脳細胞の酸素消費の時間と場所を特定する方法「COE 解析法(別名ベクトル法 fNIRS)」を開発し、国際特許化しました。この手法をさらに拡大して、臨床応用する研究に着手してきました。

本論文では、言語理解を司るウェルニッケ野という脳部位において、ヒトが単語を聞いたときに、本人の意思に関わらず、自動的に微弱な酸素消費が生じることを発見しました。

この微弱な酸素消費は、長年、脳科学界でも検出が難しいとされてきた Initial dip(イニシ ャル・ディップ)という生理反応(脳が活動したことを示す微弱反応)と酷似しています。この研究によって初めて、従来の脳血流では検出できない程のわずかな酸素消費を用いて、ヒトの高次脳機能に関わる脳反応を頭皮上から検出することに成功しました。単語の意味を知らなければ、ウェルニッケ野では酸素消費は生じませんが、単語の意味を学習すると、 学習直後から単語を聞くだけで酸素消費が起きるようになります。 つまり、単語を受動的に聞いている 1.5秒間に、酸素消費が生じたかどうかを判定することで、本人が何も意思表示をしなくても単語の意味を知っているかどうかが分かります。

これより、ベクトル法 fNIRSは、微弱かつ高速で生じる酸素消費をこれまでよりも高確率で検出し、言語処理などの高次脳機能の検査法として活用できることが示唆されました。これまでリハビリや教育分野で、脳疾患や発達障害によって意思表出が難しい人にも適用できる精度の高い脳機能診断法の確立に取り組んできました。この技術は脳機能の高速性に対応する新しい技術として、脳機能イメージング研究の進展に大きく 寄与することが期待されます。

【加藤俊徳医師による解説】

脳は、人の経験を蓄積できる臓器と考えられます。未経験な細胞が、学習をして成熟していきます。「脳がどのように経験を蓄積するのか?」をテーマに私たちは探求してきました。 言葉を聞く経験に、意味の理解を伴うと酸素消費が増加していました。一方、意味理解が伴わないと、脳血流が増加するだけで、酸素消費は増加しにくいようです。ベクトル fNIRS法(COE 解析法)と呼ばれる従 来のいかなる脳計測でも観察できていなかった脳機能の新しい指標を使っています。

さらに、イニシャルディップ(Initial Dip)問題として、脳機能計測分野では、約20年間、その存在と意義について議論されてきたテーマでもあります。特に、fMRIを使った手法では、Initial Dip の観察が、BOLD 法の正しさや超高磁場のMRIを用いて脳機能計測する理 由の一つに挙げられていました。

今回、このIllusive DIPとまで言われてきた Initial Dip を、ベクトル法fNIRSで分類して観察できただけでなく、脳機能の獲得(学習効果)に伴ってNonDipがDip化すること を証明しました。fMRIなど脳血流を用いた脳機能計測では、課題開始から5秒以内では脳 血流が増加せず、計測が困難でした。しかしベクトルfNIRS法を用いることで、課題時間の1.5秒間で nitial Dipの反応タイプを統計的に分類できるようになりました。この事実は、fMRI が全く不可能であった脳機能のメカニズムを可視化できることを示しています。

脳機能fNIRS計測法は、fMRIに比べて簡便で、かつ、人間の生活に近い状態の観察が可 能でしたが、今回の研究で、さらに新しい可能性が広がっています。

【論文ハイライト】

健常成人に1.5s間の単語をつ1ずつ受動聴取させた後、意味を理解できる単語(図中 Comprehended words)と意味を知らない単語(図中 Unknown words)に分けると、図(a) のように、ベクトルの方向が約180度異なりました。意味を知らない単語の意味を教えた 直後、再度受動聴取させた単語(図中 Learnt words)は、理解語のベクトル方向に変化しました。この反応を捉えることで、本人が障害などによって意思表示できない場合でも、言葉に対して反応しているかどうかを判定することができると考えられます。

ベクトルの方向変化

単語聴取中の反応(a)と単語聴取後(b)の反応。酸素消費の違いは、通常の脳科学研究に用いられている単語聴取後の遅延反応にはなかった。

●原著論文はこちらに掲載されております
“Vector-based phase classification of initial dips during word listening
using near-infrared spectroscopy”

Neuroreport:14 November 2012 - Volume 23 - Issue 16 - p 947–951
(Cognitive Neuroscience and Neuropsychology)