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第116号 脳スクールタイムズ 2016.3.10

脳の未来、自動運転の未来

 ■■■ 自動運転車とIT、高齢化社会への期待 ■■■

 現在、先進国を中心に車の自動運転技術の開発が進められています。
 各国の自動車産業の他、海外ではIT企業が中心となり自動運転車の開発、
 国の法律改定も含め、公道での走行の実現化を目指しています。

 日本でも内閣府より、2020年後半までには完全自動走行の市場化を
 目指す事が発表されました。

 日本においては高齢化が進み、こうした社会問題の改善に対しても、
 自動運転の実現化は大きく期待されています。

■■■ 認知機能低下が引き起す、高齢者の交通事故 ■■■

 交通事故数は年々減少傾向にありますが、高齢者の事故割合を
 見てみると年々増加していると警視庁からも発表されています。

 高齢者の事故発生の原因を見てみると、運転者事故、歩行者事故
 共に「発見の遅れ」が一般成人と比べると発生割合が高くなっており、
 次いで「判断の誤り」「操作の誤り」と認知機能低下が原因と考えられる
 内容が上位にあげられています。

 脳の学校でも2012年より始まった、NEXCO中日本、東京大学との
 共同研究で高速道路を運転中のドライバーの脳計測や、
 ドライビングシュミレーターを用いた脳活動の計測を行ってきました。
研究詳細はこちら>>

 これまでの実験結果から、自動車の加速・減速時に前頭前野の活動が
 有意に増加すること、また右折左折ではそれぞれ異なる脳部位が活動
 する事を発見てきしました。

 特に運転中は、視覚からの情報が目の動きを制御する部位である
 前頭眼野の活動性を上げ、脳を覚醒させると考えており、
 注意や判断など認知機能に関わる前頭前野の活動が自動車運転には
 大変重要である事が分かっています。

 目からの情報を元に状況を判断し、ハンドルを握る手やペダルを踏む足へ
 運動指令が出されます。停止、減速や加速、車線変更のタイミングなど
 様々な動作の元は視覚であり、認知機能も大きく左右されるのです。

 ■■■ 脳の未来、自動運転の未来 ■■■

 肥大する高齢化社会に対応するため、今後自動運転の実現は更に加速的に
 進んでゆく事でしょう。今後日本が迎える、超高齢化社会を考えると、
 自動運転の発展は大きく貢献することになるでしょう。

 私たち人間はこれまでにも、時代の変化と共に様々な技術が開発され、
 安全でより便利な社会へと移り変わってきました。
 そしてIT技術の発展は、また一つ大きな時代の変化となりました。
 自動運転車の開発もIT技術の発展に支えられ、より安全で便利な体制が
 整えられようとしています。

 これまで人々の脳を研究してきた私たちとしては、発展した社会へと
 変わって行くことは大変ありがたいことではありますが、
 これまで人間が脳を使って行っていたことが、発展した技術に肩代わり
 される事の、脳への影響を考えない訳にはいきません。

 自動運転車の開発が、高齢者の事故防止につながるということは
 注意力、判断力など認知機能が劣っても、安全な環境が整えられると
 いうことです。これまでの時代の変化でもそうでしたが、安全な社会
 では、注意して自分の目でよく見ることがどんどん減り
 車の運転に限らず、目を使う力そのものの低下に繋がっています。

 これは脳から見ると既に現代社会の大きな問題となっていると
 私たちは考えています。

 IT化されていく未来社会に向け、社会と私たちの脳がどう
 共存して付き合っていくべきなのか。
 今後、真剣に取り組むべき課題として私たちは考えています。