MRI脳画像診断
MRI(エム・アール・アイ)
検査法とは
MRI(エム・アール・アイ)
検査法とは
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)とは、脳の検査装置のことです。
30分ほど横になっているだけで、様々な方向からの脳の画像を撮影することができます。
MRI画像の多くは、脳ドックのように「脳に病気があるかどうか」を見つけるために
使われています。
しかし加藤俊徳医師のMRI脳画像診断は、
MRIの脳画像からご自身の長所や短所などの能力を診断することができます。
脳から見たビジネスで自分の強みを活かす方法、お子さんの学力を伸ばす方法などの
アドバイスや必要となるる脳番地トレーニングの処方の他、
発達障害の診断や支援にもMRIの脳画像を活かすことができます。
MRI(エム・アール・アイ)検査
は、安全な脳の撮影法
-
脳の写真を撮影するカメラ:MRI
どんな人も、過去にデジタルカメラなどで写真撮影をしたことがあるはずです。
子どもの頃の写真、行事で撮った写真、記念写真、風景写真。いまやカメラはスマートフォンに当たり前のように付いていて、
いつでもどこでも、撮りたいものを写真として、記録できるようになりました。ここでは「脳の写真って、どうやって撮るの?」の疑問にお答えします。
-
MRI撮影の様子
撮影に行き、検査服に着替えると、さっそく検査技師の人にいくつかの質問を
受けます。手術などで体の中に金属は入れていませんか?
ポケットの中に金属は入っていませんか?
時計やベルトなどの貴金属類はつけていませんか?
クレジットカードは持っていませんね?
すべてOKなら、今度は撮影室に入ります。
銀色の分厚い扉を開けると、携帯電話についているデジタルカメラとは
比べ物にならないほど大きな「脳のカメラ」が部屋いっぱいに設置してあります。
撮影するときは仰向けで横になるので、ベッド部分が入り口近くにあります。そして、そのベッドの頭の部分には、体が通るほどの穴があいたドーナツ状の
装置があります。これがMRI(エム・アール・アイ)。脳のカメラです。検査技師さんが聞きます。
「閉所恐怖症はないですか?」これもOKなら、ベッドに寝転びます。
耳栓かヘッドホンをして、体と頭が動かないように固定されると、ベッドが
動いて、ドーナツの中へと入っていきます。あっと言う間に、頭から腰のあたりまでドーナツ状の筒の中に入りました。
すると、「ビー、ビー、ビー」と工事現場のような音が聞こえてきて、脳の写真
撮影が始まります。それから約20~30分、寝転がっているだけで撮影は
終了です。撮影が終わると、よくドラマで見るレントゲン写真のような黒いフィルムに
脳の写真が焼き付けられています。 -
MRI:磁気共鳴画像法は、
どうしてドーナツ型なの?MRIとは、簡単に言うと、磁石によって作られた磁場を利用して
生体を画像化する技術です。磁場というのは、磁石によっても作られますが、電流が流れるワイヤーによっても
作られます。この場合のワイヤーは、ぐるぐると筒型に巻かれ、コイルと言います。
このような磁場を作るのに電流が用いられている磁石のことを、永久磁石に対して
電磁石と言います。このコイルによって作られた磁場の方向を表すのが、中学校の理科でも習う
「右ねじの法則」です。難しいことを並べているようですが、要は、磁石からできる磁場の中に体を入れて
写真を撮っているのです。MRIの大きな装置がドーナツ型をしていた理由は、このコイルのせいなのです。
MRIは、身体への害・副作用はないと考えられています。
MRIとCT(シー・ティー)では、あきらかに撮影技術が異なっています。
CTは、通常の場合、微量ですが放射線を使いますので病気が疑われた場合にしか
撮影しません。しかし、MRIなら、磁石の中に体を入れるだけなので、誰でも何回でも
撮影することができます。加藤俊徳医師は、数年前に日本大学産婦人科との共同研究で、お母さんのおなかの中にいる
胎児の脳を撮影したことで新聞にも載りました。もちろん、その赤ちゃんの脳には、
何の影響も残りません、それがMRIのすごいところです。 -
MRIは肩こりに効く?
磁石の力磁石の単位は、ガウスというのが一般的に知られています。
もう一つ、テスラという単位もあります。絆創膏の内側に磁石が貼ってある有名な商品がありますが、肩こりに効くという、
その磁石の強さは100ミリテスラ前後です。では、脳の写真を撮る磁石の強さはどれくらいか?
以前は、病院に設置されている多くのMRIは、1.5テスラでした。
最近では、3テスラのMRIが脳画像撮影の主流になりつつあります。テスラの強さは特殊なので、ざっと計算してみると、
MRIは、肩こり治療に使う磁石の強さの約225倍もの力を持っています。200倍の磁石というと、1kgの鉄の塊を吸いつけるか、
200kgの鉄の塊を吸いつけるかの大きな違いです。MRIがどうして銀色の仰々しい扉で特別な部屋に入れられているかというと、
MRIのドーナツの中の磁場より、MRI装置の周りの磁場が鉄の塊を動かすほど強いので、
磁石によって金属などを引き寄せる磁力を遮断するシールドルームが必要だからなのです。それほどまでに強い磁力があると、
腕時計は壊れてしまう
クレジットカードも読み取れなくなる
体の中に心臓ペースメーカーなどの金属が入っていれば壊れる
ベルトやヘアピンなどの金属を持っていると飛んで行ってしまう
実話として、加藤俊徳医師が4テスラの装置で脳研究していたころ、MRI装置から
10メートル以上も離れていた机上では、2センチほどの金属クリップが離れて見えない
MRI装置の方向を向いて立ち上がりました。クリップを3つほど触れさせてみると、
フックしなくても簡単に繋がりました。朝、研究所の机に行くと、いつもこの
クリップたちが立ち上がって待っているのでした。これ以上の磁石の話は、物理や数学の話になってしまうので触れませんが、
脳を撮影するデジタルカメラは、このような磁石がつくる磁場によって
撮影されているものなのです。 -
どうして脳のMRI画像が、
脳の個性を映し出すのか?人間の体の70%は水でできていると聞いたことがありますか?
脳の中にも、当然水分があります。
そしてその水分が、個性を映し出す鍵です。MRIで映し出す水分とは、水素原子核(プロトン)という物質です。
このプロトンを磁化させることで、画像ができるのです。脳が育つと、形が変わります。
形が変わる場所は、私が脳の枝ぶりと呼んでいる白質(はくしつ)という部分と、
神経細胞が集まっている皮質の部分で、合わせて脳番地と呼んでいいます。脳は、脳番地ごとに違った役割を持っているので、
どの脳番地が大きく成長して育っているか
どの脳番地がまだまだ小さくて未熟なのか
脳のMRI画像から細かく読影すれば、その人の得意・不得意能力や性格、生活環境、
しいては、今後の方針まで導き出すことができるのです。
-
脳画像診断ご希望の方
「加藤プラチナクリニック」のお申込みフォームへ
脳画像診断のお申込み
-
不明点などお気軽にお問い合わせください
お問い合わせ
加藤俊徳医師のMRI脳画像の豆知識
-
MRIでみえるもの
ご存じのように、私たちの脳は神経細胞のかたまりです。ところが一言で神経細胞のかたまりと言っても、脳全体が同じ種類の細胞で出来ているという訳ではありません。
脳表面だけでも、ある部分にはある種類の神経細胞が多いなどと、見た目や成長段階の異なる神経細胞がいくつかの群れを作って一つの脳を作り上げているのです。
MRIにとってそのような神経細胞はとても小さいので、ひとつひとつの神経細胞の形まで見分けることができません。
現在のところ顕微鏡でしかそのグループを区別することができませんが、さすがに頭を開いて生きた脳を見るわけにもいかないでしょう。そこで現在のところ、生きた脳を最も高精度で見ることがきる唯一の機械がMRIと言えます。脳のMRIで見えるものは何か。それはCTよりも鮮明な画像です。
MRIが発明されたことで、それまで明瞭に見えなかった脳の形が、しわの一本一本まで見られるようになりました。さらにMRIでは、脳の中の液体がある場所をはじめ、脳表面の細胞と、そこにつながる線維の部分を明確に見分けることができるのです。
加藤俊徳 医師
プロフィールを見る -
MRI脳画像の役割
CTが画期的な医療技術として応用を広げている中1973年、放射線被曝の問題を解消する新たな画像法の論文が、米国のポール・クリスチャン・ローターバー博士から発表され『ネイチャー』誌に掲載されました。この論文は、磁石を利用して生体の画像を撮影できるMRIの誕生を示しており、2003年にローターバー博士はイギリスのマンスフィールド博士とともにノーベル医学生理学賞を受賞しました。
MRIはMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像法)の略です。
磁気共鳴現象とは、簡単に言えば、磁石の力が支配する磁場に置いた物質に、ある特定の周波数の電波をあてると原子が共振する現象のことです。物質によって共鳴するものが違うので、これを利用して画像化する方法です。当時はまだ、磁気共鳴現象を使ったNMR(nuclear magnetic resonance)化学分析装置によって、物質の化学分析をしている時代でしたが、ローターバー博士は、この原理を使って生体の画像化に取り組みました。この一人のパイオニアの試みが、今では全世界に広がっています。NMRによる生体の画像化が確実に成功を収めてくると、生体を撮影する装置を特にMRIと呼ぶようになったわけです。
実際に撮られたMRI画像をお見せしましょう。
左に示した脳画像は頭部を地面に水平に撮影した水平断像MRIと呼ばれています。右に示したCT画像は、ほぼ同時期の同一人物のものす。
ふたつの画像を比較すると、MRIでは、頭蓋骨と脳実質の間に白く映し出されている脳髄液の領域が判別できますが、CTでははっきり区別できないことがわかります。
そして、脳実質を見るうえでもっとも大きな違いは、MRIでは「大脳皮質」と「白質」の境界が明瞭に描出されていることです。「皮質」は大脳の表層にある神経細胞の集まりで、思考の首座と考えられています。一方「白質」は皮質の下にある神経繊維の束で、いわば情報を運ぶブロードバンドの役割をしています。
こうして「生きている脳」の内側の構造は、ぼんやりとしか見えていなかった時代から、実際に脳解剖を見ているかのような鮮明さで見える段階に進歩しました。また、脳の病気の部分と健康な部分も、明確に区別できるようになりました。
MRI撮影は実に便利で、両耳に並行に撮影する冠状断像や前後の方向に撮影する矢状(しじょう)断像のように、見たい方向を選んで撮影することもできます。
MRIの矢状断像によって前葉と後葉に分かれて異なったホルモンを分泌する脳下垂体の実質が映し出されるようになりました。エックス線写真では、「トルコ鞍」の外形しか見えなず、CTでも脳下垂体の実質の描出は、困難でした。
最近では、三次元撮影として3D-MRI撮影法も汎用され、脳の構造をどの角度からでも再構成して詳細に調べられるようになっています。
こうして、CT撮影では制約のあった脳の構造撮影が、MRIではいとも簡単に、自由自在に得られるようになりました。現在では、おおよそ1ミリメートル程度の脳病変も検出することができます。
またMRIは磁石を用いるので、放射線被曝の問題も解消されました。そして、磁石の強さを強くするほど短い時間で鮮明な脳画像が得られることが分ってきました。
磁石の強度はテスラという人の名前から取って、単位をテスラ(T)としています。当初一般に病院で使われてきたMRIの磁場の強度は、0.5テスラや1.5テスラでした。
しかし、1990年代後半に入ると、加藤俊徳医師が1995年から2001年まで在籍していた米国のミネソタ大学MRI研究センターなどでは、4テスラや7テスラのMRI装置が研究用として稼動し始めました。
これら特殊研究施設でのMRI装置の研究成果や、コンピューター機能の向上、磁石をシールドする技術の進歩などにより、21世紀に入った現在では3テスラMRI装置が臨床医療現場に応用されるようになっています。
このように現在では、頭蓋骨を見るためにはエックス線とCTが有効ですが、脳の実質を詳細に把握するためには、MRIが不可欠のものになっていまます。
-
MRIで見ることができる脳の枝ぶり
最近のデジタルカメラには白黒で撮ったり、フルカラーで撮ったりと色々なタイプの写真を撮ることができる機能があります。
それはMRIも同じで、目的に応じて撮り方を変えることができます。普段私たちが見かけるMRIの画像は白黒の写真のようだと思います。これは、液体部分が白く、脳の細胞部分が灰色、または黒くなるように調節された画像なのです。
特に黒く映っている部分は、主に細胞と細胞を結んでおたがいに連絡が取り合えるようにしている神経線維のようなものです。画像で見ると枝のようになっているのがわかります。そこで私はそのような線維が脳に広がっている様子を枝ぶりに例えています。
-
あなたの脳は何%が健常ですか?
脳のMRI画像をみると、たまに白い点々が散らばっていたり、ある部分が一面真っ白だったり、脳の形が一部分だけいびつだったりすることがあります。
普段見られないものが画像に現れると、何らかの不具合があるのではないかと、さらに細かく脳を調べる必要が出てきます。一般の脳ドックでは、このように普段見られない異常な部位があると、あなたの脳は○○という病気になっていますと教えてくれます。突然そのような事を言われてしまうと、脳全体が悪くなってしまった、と思ってしまいがちですが本当はそうではありません。白くなっている部分や、形がいびつな部分は脳全体から考えると一部分であって、脳全ての具合が悪いということはまずありません。
例えば、脳全体の3割だけが調子悪いだけなのに、病名を付けられてしまうと、あたかも10割がダメになっていると言う印象を受けてしまうのです。
もちろん、悪い部分を見つけて治してくれるのが病院ですから、悪くなっている部分が見つかるのは当然と言えます。
しかし脳の場合、神経細胞がダメになると基本的に元に戻すことができませんから、悪くなった部分がわかっても何の解決にもならないのです。
問題は、先程の例で言うなら、正常な状態の7割をどう上手く使いこなすかということです。ですが残念ながら残りの7割をどう使えばよいかを教えてくれるところがとても少ないのが現状なのです。
自己判断や外見からの推測だけに頼らず、しっかりと脳をMRIで鑑定して意見を聞く
加藤式脳画像診断をお薦めします。
加藤式MRI脳画像診断でここまで
分かる「脳と障害児教育」から抜粋
個人情報保護のため、MRI画像を掲載することを差し控えさせていただきます。
詳細は「脳と障害児教育」をご参照ください。(写真も掲載しています)
-
脳画像診断の例
一人ひとりの顔が全部違うように、障害者一人一人の脳は全員違います。それを、見極めて、脳写真からリハビリテーションや脳教育の指示を出すことが最も効率のいい教育法だと考えます。
一例を示します。
脳画像を詳細に読んでみましょう。これは頭を床に対して水平に切ったもので、水平断像(A)といいます。
皮質は白く、白質線維は黒く描出されていますので、T2強調画像という撮影の仕方をしています。まず、①の矢印のように前頭葉をみると、ひも状です。わずかにしか残っていません。しかし②の矢印、右の聴覚、音を聞いたりする場所は残っています。さらに下のほうを見ていきます。矢印③の示す黒いところは視覚野です。目から入った情報が、④のように視覚野に送られる線維のルートがあります。⑤のように左側の繊維は、とても細いこともわかります。さらに⑥のように反対の聴覚の領域も小さいです。しかし、①から⑥まで、残っているところは全部、彼は、必死で使っています。
次に、頭を床に対して垂直に切ったもので、冠状断像(B)をみます。
⑦海馬(記憶に関係があります)があります。化膿性髄膜炎後のB君のMRI画像をみると、ここに側頭葉の⑧聴覚、聞く場所があります。また、⑨の周辺かなり高次の機能、色々な言葉を理解したりする場所があります。
これを見ただけで、彼が、前頭葉をどの程度使っているのか、ということはわからないけれども、B君の聴覚野の皮質までは、情報が入っていることは分かります。ですから、B君に対しては、聴覚的なアプローチは、可能であるといえます。たとえ、彼が今、耳が聞こえているかどうかは不明であっても、情報を入れるだけの価値は、充分にあるということです。また、左右の違いからも、より的確な情報の入り方を捉えることができます。
視覚野の働きは左右違います。(A)に示すように、この視覚野は、左脳のルートを使った(右視野からの)情報は入りにくいけれども、右脳から情報(左視野)は、入りやすいということがわかります。
こういった結果を受けて、どういう療育的な指示を出したらよいでしょうか?
B君は、右側の前方の画面が脳の中に入りやすいということがわかります。ですから、この子に話しかける時は、右から立たなければいけないということです。左から入ったら、視覚からの情報が入りにくいということです。 とても単純なことですが、これは、この子の脳を見極めた時に対応する非常に重要な情報です。MRIによる画像診断の情報によって、効率よく、聴覚の入力、それから、視覚の入力が、可能になるのです。
-
新生児重症仮死の症例
「あなたと話したい」という番組の制作につきあうのは大変でしたが、取材を通じて、教育によって脳が改善したいろいろな症例が出てきました。
そうした中で、脳の障害のされ方が全ての症例同じだった人たちがいました。それは、新生児の重症仮死といわれる人たちです。彼らは今まで間違って解釈され、このような脳をもった障害児は、最近まで適切な教育環境を受けることなく生きてきました。今も教育的な環境におかれていない方がいらっしゃるかもしれません。
脳画像から判断する限り、②④の第一次運動野その近傍の白質をほとんど障害されているために、彼らの身体はほとんど動かず、③の口の領域まで障害がきています。しかし彼らはイエス・ノーぐらいのコミュニケーションはとれるようになる可能性があり、それ以上にコミュニケーション機能は高まっていくかもしれません。
この番組の取材で何が分かったことは、脳にダメージを受けた子でも、ブロードマン9番、10番の神経繊維が黒くずっと伸びているという事実です。⑥のウエルニッケ野や⑩のブローカ野など言語野は、障害されていません。ワーキングメモリー(作業記憶)に関係すると考えられる⑨の頭頂葉、⑪の前頭前野のブロードマン46番にも、白質線維が伸びています。高次の記憶に関係素すると考えられている下側頭回⑦も発達しています。このような発達は、不思議でたまらないのですが、事実です。
たしかに海馬⑤がちょっと白くなり萎縮していたり、視床⑧は白くなっています。図37のこの人達の親は、生後すぐの診断で、新生児医療の方々に「おそらく何もできませんよ」など非常に厳しいことを言われているでしょう。彼らは、そういった医療関係者のことばだけで、「もう何もできない」というレッテルを貼られて、適切な教育を受ける環境が半減してしまったことでしょう。
ところがこの画像をみて、私はこの前頭葉の運動野②④や視床⑧ 、一部の海馬⑤以外は脳の形は残っている、と思うわけです。「運動系が障害されると脳は働かないか」という、非常に脳科学としては重要な問題だったのですが、実は働くのです。たとえ海馬が少し障害されていたとしても、です。
つまり、残っているところ脳部位同士が結びつけば、コミュニケーションがとれると言うこと、これが今まで全くわかっていなかったのです。
このタイプの重症児(者)は、新生児期の脳画像によっても早期に、残存機能が推定でき、教育支援法を工夫することができます。しかし、臨床症状を見ると新生児科医は、重度であることを宣告し、残存機能に目を向けてその教育的予後と手段を示さないことがほとんどであったと思います。トーキングエイドなど教育によって発達が顕著な例は、運動障害が強くて、外見上でから、強い脳機能サインを推測しにくい場合が多いと思います。
障害児(者)は見かけによらないことを十分に理解する必要があります。
-
交通外傷後遺症の症例の紹介
この脳画像は左から水平断(A)、冠状断(B)のT2強調画像、矢状断(C)のFLAIR画像です。かなりひどく障害されています。脳は、ごくの部分しか残っていません「この人の耳は聞こえるわけない」ほとんどの人は、そう思うでしょう。
しかし、私には異なって見えます。彼は、間違いなく音を聞いてよく理解している。どの位理解しているかわからないけども、十分に聞こえていることが、ここの画像に写っています。
図38の右脳の側頭葉①、後頭葉の第一次視覚野②、大脳基底核④、頭頂葉③に及ぶ広汎な脳障害であることは間違いありません。病変の分布から、生後でなく数歳のときの破壊性病変によって、この脳損傷が起きたこともわかります。 しかし、残っている脳領域をよくみれば、矢印で示すように左第一次聴覚野⑤とその周囲の第二次聴覚野⑥は、普通の大きさよりも、もっと大きくなっています。ここの部分だけ、なぜこんなに大きくなる必要があったかと言うことが重要です。つまり、彼はこれを使っているのです。だから大きくなったのでしょう。
彼は、運動野の障害が強いので、自分から働きかけはできません。ですが彼の脳は、ちゃんと音を解析的に聞いているのです。そういった重要なことがこの画像でわかります。左の前頭前野⑦も頭頂葉⑧も、海馬⑩も残っているので、ワーキングメモリーの働きを引き出すことができるかも知れません。実際にこの子は、食事を口から取っており、摂食行動を本人の意思の表出と考えることもできます。
「脳と障害児教育」より
-
脳画像診断ご希望の方
「加藤プラチナクリニック」のお申込みフォームへ
脳画像診断のお申込み
-
不明点などお気軽にお問い合わせください
お問い合わせ